アンニュイな彼
「ち、違いますっ!」
焦って両手をぶんぶん振って否定する私の言葉なんて、誰も聞いてないし!
「はは! 確かに目敏いな!」
智兄はその勘違いが暴走する光景を見て、豪快に笑ってるし。
もうっ、笑ってないで否定してよーっ!
恥ずかしくて、先生の方をちらりと見ると、この騒ぎにも関わらず涼しい顔で雑誌に目を落としている。
「あのっ、私たちいとこ同士なので苗字が同じだけなんです。夫婦ではありません!」
私が大声できっぱり言うと、一瞬時が止まったかのような妙な静寂に包まれた。
「あらぁ……なんだ、そうだったの。私ったら、てっきりご夫婦だと勘違いしちゃって。ごめんなさいね」
常連さんは眉を下げて言った。
「実は前々からね、仲が良いふたりを見てお似合いだなーって思ってたのよ。いとこ同士ねぇ……なんだ、ご夫婦じゃなかったのね」
残念そうにそう続けた常連さんの周囲で、お連れ様たちもうんうんと同調した。
「まあ、でも、いとこ同士でも結婚できますからね!」
カウンターの中で智兄が、一際明るい声色で言った。
「へ?」
いとこ同士で、結婚……?
って、なに意味不明なこと言ってくれてんの⁉︎
焦って両手をぶんぶん振って否定する私の言葉なんて、誰も聞いてないし!
「はは! 確かに目敏いな!」
智兄はその勘違いが暴走する光景を見て、豪快に笑ってるし。
もうっ、笑ってないで否定してよーっ!
恥ずかしくて、先生の方をちらりと見ると、この騒ぎにも関わらず涼しい顔で雑誌に目を落としている。
「あのっ、私たちいとこ同士なので苗字が同じだけなんです。夫婦ではありません!」
私が大声できっぱり言うと、一瞬時が止まったかのような妙な静寂に包まれた。
「あらぁ……なんだ、そうだったの。私ったら、てっきりご夫婦だと勘違いしちゃって。ごめんなさいね」
常連さんは眉を下げて言った。
「実は前々からね、仲が良いふたりを見てお似合いだなーって思ってたのよ。いとこ同士ねぇ……なんだ、ご夫婦じゃなかったのね」
残念そうにそう続けた常連さんの周囲で、お連れ様たちもうんうんと同調した。
「まあ、でも、いとこ同士でも結婚できますからね!」
カウンターの中で智兄が、一際明るい声色で言った。
「へ?」
いとこ同士で、結婚……?
って、なに意味不明なこと言ってくれてんの⁉︎