アンニュイな彼
智兄の方をキッと睨むように見ると、相手は惚けたような表情で肩をすくめた。
「そうよねっ! 若いんだから頑張りなさい!」
「私たち、応援してるから!」
などと言い合いながら、常連さんたちが帰ってゆく。
「えっ、あのっ!」
必要ないです、そんな謎のエールは!
せっかく誤解は解けたのに、これじゃあこれからも常連さん達を勘違いさせるネタを投下してしまったような気がしてならない……。
もう、智兄ったらなに考えてるの⁉︎
「笹原先生、ですよね?」
ブレンドコーヒーが出来上がり、 カウンターの内側から智兄は、湯気の立つカップを先生の前に置いた。
「コーヒーお待たせしました。それから先日は愛がお世話になって、ありがとうございました」
智兄は、さっき常連さん達と交わした砕けた口調ではなく、いつもより四角張ったトーンで先生に言った。
「こちら、お礼の意味を込めてサービスさせていただきますので、どうぞ」
そして、カウンターの中から客席に出て来ると、レジ横の籠の中からチーズスティックケーキをひとつ取った。
「と、智兄! 先生は甘いものが苦手だから……」
サービスしても困るんじゃないかと思い、私は先回りしてガードするように先生の前に立つ。
「これはそんなに甘くないぞ、大丈夫だ」
「いやいやいや、でも……」
勝手に自分の物差しで甘くないとか決めないでよ!
「そうよねっ! 若いんだから頑張りなさい!」
「私たち、応援してるから!」
などと言い合いながら、常連さんたちが帰ってゆく。
「えっ、あのっ!」
必要ないです、そんな謎のエールは!
せっかく誤解は解けたのに、これじゃあこれからも常連さん達を勘違いさせるネタを投下してしまったような気がしてならない……。
もう、智兄ったらなに考えてるの⁉︎
「笹原先生、ですよね?」
ブレンドコーヒーが出来上がり、 カウンターの内側から智兄は、湯気の立つカップを先生の前に置いた。
「コーヒーお待たせしました。それから先日は愛がお世話になって、ありがとうございました」
智兄は、さっき常連さん達と交わした砕けた口調ではなく、いつもより四角張ったトーンで先生に言った。
「こちら、お礼の意味を込めてサービスさせていただきますので、どうぞ」
そして、カウンターの中から客席に出て来ると、レジ横の籠の中からチーズスティックケーキをひとつ取った。
「と、智兄! 先生は甘いものが苦手だから……」
サービスしても困るんじゃないかと思い、私は先回りしてガードするように先生の前に立つ。
「これはそんなに甘くないぞ、大丈夫だ」
「いやいやいや、でも……」
勝手に自分の物差しで甘くないとか決めないでよ!