アンニュイな彼
「おや? 藤野と坂下じゃないか」
私がそんな梨沙ちゃんを不思議に思って斜め後ろから見つめていたとき、ちょうど美術室の前で、背後から声をかけられた。
振り向くと、そこには。
「中山先生!」
「わー、中山先生、お久しぶりです!」
私と真菜が同時に明るい声を上げた。
三年間担任だった中山先生が、目元に深く皺を刻んで微笑んでいた。
今年度で退職される中山先生は、優しいお父さんみたいな先生で、生徒から人気だった。
「藤野は短大を卒業したんだったな。職場はどうだ?」
「あ、はい……。今は親族が経営してるところで働いてて」
「ああ、ご実家のフレンチか」
「いえ、いとこがやってるカフェです。そこで、主にウエイトレスを」
と私が言うと、中山先生は少し驚いたように、細い目を広げた。
「そうか、てっきり調理の仕事をしたいのだと思っていたよ。まあ、楽しんで仕事しているなら、先生は応援するけどな」
「あ……」
外部の短大を受験すると中山先生に相談したとき、話したんだっけ。
私、いつかお父さんみたいに、食べた人を笑顔にする料理人になるんです、って。
中山先生はそのときも、今と同じように〝先生は応援する〟って言ってくれた。
事情があってsugar gardenに雇ってもらうことになったけど、いつかは、私。
本当は__。
私がそんな梨沙ちゃんを不思議に思って斜め後ろから見つめていたとき、ちょうど美術室の前で、背後から声をかけられた。
振り向くと、そこには。
「中山先生!」
「わー、中山先生、お久しぶりです!」
私と真菜が同時に明るい声を上げた。
三年間担任だった中山先生が、目元に深く皺を刻んで微笑んでいた。
今年度で退職される中山先生は、優しいお父さんみたいな先生で、生徒から人気だった。
「藤野は短大を卒業したんだったな。職場はどうだ?」
「あ、はい……。今は親族が経営してるところで働いてて」
「ああ、ご実家のフレンチか」
「いえ、いとこがやってるカフェです。そこで、主にウエイトレスを」
と私が言うと、中山先生は少し驚いたように、細い目を広げた。
「そうか、てっきり調理の仕事をしたいのだと思っていたよ。まあ、楽しんで仕事しているなら、先生は応援するけどな」
「あ……」
外部の短大を受験すると中山先生に相談したとき、話したんだっけ。
私、いつかお父さんみたいに、食べた人を笑顔にする料理人になるんです、って。
中山先生はそのときも、今と同じように〝先生は応援する〟って言ってくれた。
事情があってsugar gardenに雇ってもらうことになったけど、いつかは、私。
本当は__。