アンニュイな彼
午後の日差しが降り注ぎ、逆光で視界が暗くなる。
高校時代の先生は、いつも神々しかったのに。なぜだか今は、翳っていて。
「あなたも、大学部の方?」
「い、いえ、私は」
森宮さんと目線ががっちり合ったので、私は左右に小さく首を振った。
「愛さんはsugar gardenで働いてるんです。いとこさんが経営されてて」
「えっ! sugar garden⁉︎ ってあの、商店街にあるカフェ?」
紹介してくれた梨沙ちゃんが頷きながらも反射的に仰け反るくらいの勢いで、森宮さんは続けた。
「実はね、初夏号で取り上げたら反響があって、もう一度取材に行きたいと思ってたの。今度はスイーツ特集だから、スティックチーズケーキを大々的に載せたいと思ってて!」
早口で捲し立てるように言った森宮さんに、私は面食らった。
これほど美しい人に見つめられた経験がないので、その迫力に気後れする。
「どうかしら? いとこさん、許可してくださるかしら」
「は、はぁ……」
梨沙ちゃんが部員に紹介するって言っただけであれだけ興奮していた智兄だから、きっと大々的にスイーツを取り上げてもらえると知れば、喜んで対応するだろう。
「ちょうど冬の新作も出るみたいなので、いとこもきっと喜んで応じると思います……」
「ほんと⁉︎ 嬉しいわ〜!」
肩に掛けていたバッグの中から手帳を取り出し、「取材に行くならお客さんのいない定休日の方がいいかしら」森宮さんは独り言みたいに言った。
「お客様のご迷惑にならなければ営業時間中でも構わないと思いますけど……定休日なら第三月曜日です」
「明後日かぁ。文化祭の代休よね。うん、この日の午後なら私も空いてるわ。ちょっとバタバタになるけど」
開いたばかりの手帳をぱたりと閉じた森宮さんは、すぐにまたそれをバッグに仕舞い先生の真横に立った。
まるでそこが自分の定位置だとでもいうような、自然な形で。
高校時代の先生は、いつも神々しかったのに。なぜだか今は、翳っていて。
「あなたも、大学部の方?」
「い、いえ、私は」
森宮さんと目線ががっちり合ったので、私は左右に小さく首を振った。
「愛さんはsugar gardenで働いてるんです。いとこさんが経営されてて」
「えっ! sugar garden⁉︎ ってあの、商店街にあるカフェ?」
紹介してくれた梨沙ちゃんが頷きながらも反射的に仰け反るくらいの勢いで、森宮さんは続けた。
「実はね、初夏号で取り上げたら反響があって、もう一度取材に行きたいと思ってたの。今度はスイーツ特集だから、スティックチーズケーキを大々的に載せたいと思ってて!」
早口で捲し立てるように言った森宮さんに、私は面食らった。
これほど美しい人に見つめられた経験がないので、その迫力に気後れする。
「どうかしら? いとこさん、許可してくださるかしら」
「は、はぁ……」
梨沙ちゃんが部員に紹介するって言っただけであれだけ興奮していた智兄だから、きっと大々的にスイーツを取り上げてもらえると知れば、喜んで対応するだろう。
「ちょうど冬の新作も出るみたいなので、いとこもきっと喜んで応じると思います……」
「ほんと⁉︎ 嬉しいわ〜!」
肩に掛けていたバッグの中から手帳を取り出し、「取材に行くならお客さんのいない定休日の方がいいかしら」森宮さんは独り言みたいに言った。
「お客様のご迷惑にならなければ営業時間中でも構わないと思いますけど……定休日なら第三月曜日です」
「明後日かぁ。文化祭の代休よね。うん、この日の午後なら私も空いてるわ。ちょっとバタバタになるけど」
開いたばかりの手帳をぱたりと閉じた森宮さんは、すぐにまたそれをバッグに仕舞い先生の真横に立った。
まるでそこが自分の定位置だとでもいうような、自然な形で。