アンニュイな彼
「では、もしご連絡してみていとこさんのご都合がよろしければ、晃太も取材のあとそこで待ち合わせましょう。私たちの予定にもちょうどいいわ」


そして先生を見上げ、今までのお仕事モードとは違う、女性らし柔らかなトーンではっきりと言った。

〝私たち〟と。


「わかった。」


あっさり。
先生はこくりと頷いて、微笑みかける森宮さんを穏やかな眼差しで見下ろした。


「……っ」


私に対する態度とは、随分違うんですね、先生。

私の誘いにはとっても億劫な感じで、ぞんざいな返事をして。意地悪にからかって、適当にあしらうくせに。

彼女にはすごく聞き分けがよくて、そんなに優しいんだ。

って。
当たり前だよね、彼女だもん。


「……じゃあっ、私の方からもいとこに話しておきますので。ご連絡お待ちしてます! 失礼します!」


真菜が呼び止める声が後ろの方から聞こえては来たけど、足を止められなかった。
いち早くこの場から立ち去りたくて。


「__は、はぁっ、」


私は一目散に美術室を出ると、階段を降り、クラス展示に足を運ぶお客さんや在校生たちのすき間をぶつかりそうになりながらなんとか通り抜け、校舎の外に出た。
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