アンニュイな彼
間髪入れずに強い口調で言った智兄は、「決めてたんだ、小さい頃から」秘めた思いを押し殺すような声で続けた。


「俺が愛を幸せにする、って。ここで愛が好きなものを、俺がずっと作り続けていくから。飽きるまで食わしてやるから、だから」


そこで言葉を切って、予想外の告白に呆然とする私の目を真っ直ぐに見据えた。


「愛は黙って俺について来いよ。脇見なんてしないで」


揺るぎなく、力強い眼差し。


「と、智兄……」


ここで頷けば、私の将来は確定する。

脇道なんかない、真っ直ぐに敷かれたレールをただひたすら、智兄が作った時刻表通りに進むだけ。

自分の感情に蓋をして、耐えて割り切って、黙って従うのが大人?
受け入れて、平気な振りして生きるのが大人になるってことなの?


「……ごめん……」


結局私は、智兄に出されたゆず茶を一口も飲まず、sugar gardenを後にした。
< 63 / 83 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop