アンニュイな彼
「__こんにちは、W出版の森宮です」
ドアが開き、女性の声がした。
登場した森宮さんは、背景にした悪天候の光景がCGなんじゃないか? と思わせるような姿だった。
雨になど降られてない、風などまったく受けていないと言わんばかりの出で立ち。
バサバサもびっしょりもしていない。
くるくるカールの髪は崩れ知らずでとても綺麗で、メイクもバッチリ。大人可愛い美しさ。
「藤野さん、急な取材に対応してくださり、ありがとうございます」
「いえいえ、大事ないとこの頼みですから。それより、こんな雨風の中来ていただいて……大丈夫でしたか?」
「ええ、車で乗せて来てもらったので」
「そうでしたか」
別に私が頼んだわけじゃないのに、と思いながら、智兄と森宮さんのやり取りを聞き、私はコーヒーを二杯淹れた。
それと、まだ商品化されてないチーズスティックケーキ冬限定柚子風味や、人気のフレーバーをいくつかお皿に綺麗に並べ、森宮さんと智兄が話しているテーブルに運ぶ。
「私、前回の取材の後、ここのチーズスティックケーキを頂いて食べたとき、とても感動したんです。チーズケーキには目がないもので」
一眼レフで写真を撮ると、森宮さんは柚子の皮が入ったチーズスティックケーキをじっくり見た。
「ありがとうございます。これは元々、こいつのおやつとして作ってたものでして」
言いながら、智兄はテーブルに脇に立つ私を顎で指した。
「そうなんですか。おふたりはいとこ同士だそうですね」
「はい、昔っから寂しがり屋なもんで世話が焼けて。でも、このレシピを生み出すきっかけとなった愛は、俺にとってとても大事な存在なんです」
他人が聞いたら胸焼けするような台詞をさらっと言って、智兄は満足げに私を見上げた。
ドアが開き、女性の声がした。
登場した森宮さんは、背景にした悪天候の光景がCGなんじゃないか? と思わせるような姿だった。
雨になど降られてない、風などまったく受けていないと言わんばかりの出で立ち。
バサバサもびっしょりもしていない。
くるくるカールの髪は崩れ知らずでとても綺麗で、メイクもバッチリ。大人可愛い美しさ。
「藤野さん、急な取材に対応してくださり、ありがとうございます」
「いえいえ、大事ないとこの頼みですから。それより、こんな雨風の中来ていただいて……大丈夫でしたか?」
「ええ、車で乗せて来てもらったので」
「そうでしたか」
別に私が頼んだわけじゃないのに、と思いながら、智兄と森宮さんのやり取りを聞き、私はコーヒーを二杯淹れた。
それと、まだ商品化されてないチーズスティックケーキ冬限定柚子風味や、人気のフレーバーをいくつかお皿に綺麗に並べ、森宮さんと智兄が話しているテーブルに運ぶ。
「私、前回の取材の後、ここのチーズスティックケーキを頂いて食べたとき、とても感動したんです。チーズケーキには目がないもので」
一眼レフで写真を撮ると、森宮さんは柚子の皮が入ったチーズスティックケーキをじっくり見た。
「ありがとうございます。これは元々、こいつのおやつとして作ってたものでして」
言いながら、智兄はテーブルに脇に立つ私を顎で指した。
「そうなんですか。おふたりはいとこ同士だそうですね」
「はい、昔っから寂しがり屋なもんで世話が焼けて。でも、このレシピを生み出すきっかけとなった愛は、俺にとってとても大事な存在なんです」
他人が聞いたら胸焼けするような台詞をさらっと言って、智兄は満足げに私を見上げた。