アンニュイな彼
「ちょ、ちょっと、真菜! 声が大きい!」
「ご、ごめんごめん。でもまさか、あの笹原先生が? まさか、偶然?」
「その〝笹原先生〟って、この雑誌を置き忘れてった人か?」
唐突に会話に割って入って来た智兄が、真菜の前にスティックチーズケーキとココアを置いた。
「真菜ちゃん、生クリーム増量しといたぞ」
「わーい、ありがと! さすが智樹さん!」
早速アイスココアの上にのった生クリームをストローの先端で掬った真菜は、それを口に運ぶ途中、にっといたずらな笑顔を浮かべる。
なんだか、嫌な予感がする……。
「笹原先生って三年のときうちらの副担だったんだけど」
「へえ、そうなんだ」
「なんとその先生に、愛ったら三年間も片思いしてたのよ!」
予感的中。
「ちょっと、真菜! ペラペラ喋んない
でよ……!」
「えー、別にいいでしょ? 智樹さんになら話しても。いとこなんだし、家族みたいなものでしょ?」
いや、だから嫌なんだって……。
智兄と私は、小さい頃からお互いの両親がお店をやってて仕事が忙しかったから、兄妹みたいに一緒の時間を過ごして育ってきた。だからなんだか恋愛話とか照れ臭くて気まずいのだ。
それに。
「愛が片思い、だと?」
呟いた智兄は、ピクリと片眉を上げた。
「ま、まあ片思いっていうか、憧れてたっていうか……」
言い訳みたいに言って、私は溜め息を吐いた。
「ご、ごめんごめん。でもまさか、あの笹原先生が? まさか、偶然?」
「その〝笹原先生〟って、この雑誌を置き忘れてった人か?」
唐突に会話に割って入って来た智兄が、真菜の前にスティックチーズケーキとココアを置いた。
「真菜ちゃん、生クリーム増量しといたぞ」
「わーい、ありがと! さすが智樹さん!」
早速アイスココアの上にのった生クリームをストローの先端で掬った真菜は、それを口に運ぶ途中、にっといたずらな笑顔を浮かべる。
なんだか、嫌な予感がする……。
「笹原先生って三年のときうちらの副担だったんだけど」
「へえ、そうなんだ」
「なんとその先生に、愛ったら三年間も片思いしてたのよ!」
予感的中。
「ちょっと、真菜! ペラペラ喋んない
でよ……!」
「えー、別にいいでしょ? 智樹さんになら話しても。いとこなんだし、家族みたいなものでしょ?」
いや、だから嫌なんだって……。
智兄と私は、小さい頃からお互いの両親がお店をやってて仕事が忙しかったから、兄妹みたいに一緒の時間を過ごして育ってきた。だからなんだか恋愛話とか照れ臭くて気まずいのだ。
それに。
「愛が片思い、だと?」
呟いた智兄は、ピクリと片眉を上げた。
「ま、まあ片思いっていうか、憧れてたっていうか……」
言い訳みたいに言って、私は溜め息を吐いた。