アンニュイな彼
走行中にぽつぽつとインタビューした内容をまとめると、今日の夜、高校の同窓会を兼ねた中山先生の退職を祝う会が開かれるらしい。
先生は、現在もお世話になっているということで、勝手に幹事にされたみたい。
先日も森宮さんに誘われて、中山先生に贈る記念品を選ぶのに付き合わされたらしい。(そのときに智兄に目撃されたのかな、と予想)

今日はこれから目を付けていたお祝いの品を購入して、真っ直ぐ同窓会に行く予定だったとか。
なぜ年度末ではないこの時期に退職を祝う会が行われるのかというと、森宮さんが近日中に海外に留学するからだそうだ。(元々森宮さんは帰国子女で、誰に対してもフレンドリーなタイプらしい)

だから、取材も急遽だった。
森宮さんは忙しい合間を縫って、時間を作ってでも最後にsugar gardenを自ら取材したいと思ってくれていた。


『それは困りますよね! だってここのスイーツやコーヒーは、この商店街を訪れるお客さんにとっての心の拠り所ですし』


あれは、営業トークとかじゃなくて本心で言ってくれてたのかな……。

智兄との仲がギクシャクしなければ、親族のことを褒められたんだもの、素直に嬉しいと思えたかもしれない。

私、明日から仕事どうしよう……。


「着いたよ。」


ついsugar gardenのことを考えて暗くなっていた私は、先生の声にはっとした。
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