アンニュイな彼
智兄は過保護なのだ。
小さい頃、私のことをからかって泣かせた男の子を鬼のような形相で怒ってくれて、それからいじめられることはなくなったから感謝はしてるんだけど。
私が男友達とちょっとでも話そうもんならどこの誰か必ず聞いてくるし、グループで遊びに行けば門限とか勝手に決めるし。
心配してくれてるのは嬉しいんだけど、正直口うるさい兄っていうか、歳も一回り離れているから頑固親父ってな感じなんだよね。
現に今だって、鋭い視線をビシバシ感じる気がするんですけど……。
「この雑誌、梨沙に渡しとこうか? 笹原先生に返しといてって」
「うん……そうだな、お願いしようかな」
接点がなくなっちゃうみたいで、ちょっぴり残念だけど。
きっと部員たちが載ってる大事な雑誌だから、失くしたのはショックだろうし。それに、必ずココにまた来てくれる保証はないし、真菜に頼んだ方が確実だ。
「うん。もし迷惑じゃなかったらお願……」
「それか、」
名残惜しいなぁ、と思って雑誌を見つめて言った私の言葉を遮って、真菜はニヤリと冷やかすように笑った。
「自分で返しに行って来たら? 憧れの笹原先生にお近づきになれるチャンスだよ!」
「お、お近づき……⁉︎ て、うわあ!」
心臓がドキ!っと高鳴った拍子に持ってた伝票をつい落としそうになって、私は慌てて持ち直す。
伝票は、両手の上で活きのいい魚みたいにバウンドした。
小さい頃、私のことをからかって泣かせた男の子を鬼のような形相で怒ってくれて、それからいじめられることはなくなったから感謝はしてるんだけど。
私が男友達とちょっとでも話そうもんならどこの誰か必ず聞いてくるし、グループで遊びに行けば門限とか勝手に決めるし。
心配してくれてるのは嬉しいんだけど、正直口うるさい兄っていうか、歳も一回り離れているから頑固親父ってな感じなんだよね。
現に今だって、鋭い視線をビシバシ感じる気がするんですけど……。
「この雑誌、梨沙に渡しとこうか? 笹原先生に返しといてって」
「うん……そうだな、お願いしようかな」
接点がなくなっちゃうみたいで、ちょっぴり残念だけど。
きっと部員たちが載ってる大事な雑誌だから、失くしたのはショックだろうし。それに、必ずココにまた来てくれる保証はないし、真菜に頼んだ方が確実だ。
「うん。もし迷惑じゃなかったらお願……」
「それか、」
名残惜しいなぁ、と思って雑誌を見つめて言った私の言葉を遮って、真菜はニヤリと冷やかすように笑った。
「自分で返しに行って来たら? 憧れの笹原先生にお近づきになれるチャンスだよ!」
「お、お近づき……⁉︎ て、うわあ!」
心臓がドキ!っと高鳴った拍子に持ってた伝票をつい落としそうになって、私は慌てて持ち直す。
伝票は、両手の上で活きのいい魚みたいにバウンドした。