アンニュイな彼
何度も何度も繰り返した。

唇が擦れ、先生の味に慣れてきた頃、なにも考えられなくなるくらい頭はクラクラだった。

変だな、目眩が快感になるなんて。

これが、オトナのキス__?


「__っ! せ、先生っ、」


ん? と、惚けたように首を傾げて見せるけど、先生。
ほどよい力加減で支えた私の体を、大袈裟じゃない程度に首尾よく押すもんだから、体がもう寝室に進出しているし、それに。

私の服がはだけているのは、いつの間の出来事⁉︎ き、キスに集中しすぎたせいでしょうか。


「ま、待ってください、ちょっと、」
「ここまできて、お預け?」



その調子でグイグイ押され、脱がされて、寝室のベッドの前まで来た先生は切なげに目をすがめる。

うっ……。
そんな懇願するような目で見ないでくださいーっ。


「……し、刺激が強すぎですっ……」


躊躇しながら私が言うと、体の動きをピタリと止めた先生は、


「あんなシーンにあんだけ動揺してたくらいだもんネ」


意地悪な目で、にっと笑う。


「あっ! あの映画のときも、もしかしてずっと起きてたんですか⁉︎」
「好きな女の隣でおとなしく寝られるわけないでしょ」
「……っっ」


ずるいです……。
そんなこと言われちゃうと、タヌキ寝入りをもうこれ以上責める気になれないです。


「あの、先生、」


ベッドに座った先生は、「先生?」不機嫌そうに復唱しながら、私からメガネを取り上げる。かちゃりと畳んで、ベッドの上に置いた。
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