聖女さまの闇恋愛紀行
2
アマーリエは考えていた。
この村には五年。もうずっと前からいるような優しい村。
長居してはならないと思いながら、随分といてしまったと。
出発するとき、皆が涙ながら様々な心境で送り出してくれた。
結婚したい、は本当。けれど、村を出る理由ではなかった。

「・・・皆さま、大変お世話になりました」

村から程離れた場所。彼女の周りには、彼女の倍近い大きさのモンスターが大量に倒れていた。
見えなくなった村に向かい、深々と会釈する。これで思い残すことはない。
小さな鞄とメイス。それだけを持って旅立った。

◇◆◇◆◇◆◇◆

馬車などの足もなく、一週間掛かって街に到着した。
行商が多いようで、入り口から遥か向こうまで露店が途切れない。行き交う人も多い。
「・・・さて、男性がいるのは酒場でしょうか」
有言実行。しかし。
「あれー? シスターじゃん。超美人! 丁度僧侶探してたんだよ、なぁ」
後ろに向かって叫ぶ若い男性。ぬっと年嵩のある男性が現れる。
「ん? ああ、支援がいると助かる」
騒がしい若い男性と違い、落ち着いた男性。
「あら、わたくしも助かります。一通りこなせますので良しなに。アマーリエと申します」
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