りせい君の理性が危うい瞬間





「利生君の特別が...わたし?」


「そう、あんただ。 俺は今あんたが欲しくてたまらない。」


「...っ、なにそれおかしいよ...!」


だって。

特別だったら尚更、大切に扱わないといつかは壊れてしまうのに...


利生君はそんなのお構い無しに、私という名のガラスを雑に扱うんだ。



それを特別って呼ぶの?...笑わせないでよ。



「...利生君は嘘つきだ。 弱ってる私を見て楽しんでる感情を、“特別“って呼んでるだけなんじゃないの?
私はモノじゃないんだよ!?利生君を笑わせるためにこの世に生まれてきたんじゃないんだから...っ!」



溜まった感情を吐き出したいがための、多分これも八つ当たり。



私の大きな声が、プールの水中に溶けていくような錯覚に陥ったのは、すぐ近くで利生君のため息が聞こえたからだ。


こんな状況でも、彼は私の胸を言葉で刺してくる。




「...分かってないね、あんたも。
本当に特別なモノほど雑に扱ってしまうもんだよ?
あんただってブラック企業で働いてる父親が死ぬまで気がつかなかったじゃないか。」


「ーーーッ」


「つまりはそういうこと。
失って気づく?...はっ、笑わせるね。
じゃあ失うまでの期間、優しく出来なかったのはなぜだと思う?
結局は自分の気持ちを満たすためだけに隣に居てくれる存在がほしいーーー...人ってそういう生き物だろ?」



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