りせい君の理性が危うい瞬間
心の呼吸は止まってるはずなのに、生かされているのはなんでなの。
涙が頬から滑り落ちて、それを手のひらで受け止めてくれたのは利生君だった。
利生君の手のひらに溜まった私の涙が、キラキラ光って。いつかはガラスになって少しでも価値を見出す事が出来るのかな...?
...考えても、分かんないや。
でも、悔しいけど。
この男は、父親を失って空っぽになった私の心を見てきてる。
そして少しずつーー。私の空っぽの心を、その妖しさで満たそうとしてくれているんだ...。
私は利生君の肩に顔を埋めて泣いた。
不自然なくらいの嗚咽と、涙と、鼻水で、彼を汚してしまったんだ。
だけど、こういう時だけは何も言わずに黙って見守る利生君を心底ズルいと思った。
「...嫌いだよ、利生君なんか...」
「そうかな?俺はあんたが俺のこと、実は好きなんじゃないかって思ってるよ?」
「...どうして?」
「だって、全部さらけ出してくれてるじゃないか。
敵相手に弱ってるとこを見せたら終わりでしょ?
でもあんたは俺には見せてる。母親にも絶対に見せない姿を俺にだけは見せてる...それって、」
“愛なんじゃないかって、錯覚しそうなほどの憎しみだよ“