りせい君の理性が危うい瞬間
冷たいって、どの口が言うの。
...まあでも、今日から一人ぼっちの家に帰ってきても寂しいだけだったから。
1人にならずに済んだのに、正直ホッとしてる部分もあるんだよ?
利生君って変な人。
恐がらせたり、絶望させたり、安心させたり。
私の色んな感情を煽ってくるんだもん...このままじゃ本当に心ごと奪われちゃいそうだ。
「羽子ー、制服が濡れて気持ち悪い。風呂入りたい」
っと、家に上げて3秒も経ってないのに、早速図々しい利生君。
「えー、やだよ男にお風呂貸すの...」
「なに〜?意識してんの羽子ちゃん...ヤラシイ...」
「ばっ、ばか!!意識なんかするわけないからっ!
もう利生君帰ってよ!」
「いや、別にいいよ?羽子がどうしても見たいって言うなら...」
「わあーーー!やめてよ利生君のバカァ!!」
家の廊下のど真ん中で、制服のズボンのベルトを緩める利生君を全力で止めた。
利生君ってほんと...自由すぎてついていけない。
濡れたままだと家の床が水浸しになっちゃうから、仕方なくクローゼットに閉まってあった、私には大きめのスウェットを貸してあげた。
「うわっ、いかにも庶民って感じ。」
上下セットの灰色のスウェットを着た利生君が、自然な嫌味を言う。
「どうせ庶民ですよーだ...」
口を尖らせて、私も言い返すと。
「うーん...でも羽子の匂いが染み付いてるから、好きかも。
なにこれ、貰っていいの?それとも高値で買おうか?」
スウェットの匂いを嗅ぎながら真剣に言うから、ソファに添えてあるクッションを手に取って利生君に投げつけた。
...この男、人のスウェットの匂い平気で嗅ぐとか信じられない。