りせい君の理性が危うい瞬間
「利生君って、顔が良くなくてお金持ちじゃなかったら絶対モテないと思う」
「ふっ...面白いこと言うね、羽子。
それは俺じゃなくても皆そうでしょ?」
「顔が良くなくてお金持ってなくても、性格が良かったらモテる人はモテるもん」
「そういうのは“都合“がいいから人が寄ってくるんだよ。
悪く言えば、どんな形でも当てはまるパズルのピース。そんなのつまんないでしょ? 達成感がなかったら、パズルの意味なんてないんだよ、羽子。」
私が投げつけたクッションを、両手で受け止めた利生君が、私の前に立ち。
クッションを私の尖った唇に押し付けた。
ああ言えばこう言う。それは私も利生君も一緒で、きっと。
私たちはどこまでも価値観が合わない、考え方すべてが真逆なんだ。
だけど...そんな利生君と二人っきりなのに、不思議と居心地が悪い訳じゃない。
ーーーむしろ。
「羽子、さっきから玄関の方うるさいんだけど」
利生君に言われ、ハッと我に返る。
リビングのすぐ近くにある玄関から、ーードンドンドン!!と乱暴な音が聞こえてきて、急に震え出す体。
「光崎さーん、居留守使ってねーでさっさと出てこいやゴラァ」
「借りたもんは返すのが約束だろー?」
ドアから覗かなくても、声だけで嫌でも分かってしまう。
利生君がいる時に、借金取りが来るなんて...。
すっごく恥ずかしい、穴があったら入りたいよ...。