りせい君の理性が危うい瞬間
「...ふーん、羽子ん家借金してんだ」
「あっ...」
「そんなに怖がらないでよ。 別に羽子のこと軽蔑したりなんかしないよ、ね?」
サラリと私の髪を撫でる利生君は、怯えた私を安心させようとずっと笑ったままだった。
お金持ちの利生君には絶対に理解出来ない事だと思ってた。
お金のことで人にバカにされたりすることが、どれだけの屈辱(くつじょく)かを。
だけど、今だけは...私の気持ちを優先してくれてるみたいだ。
「羽子は...あの人たち嫌い?」
利生君の言葉に、こくりと頷くと。
「そっか...じゃあ俺も嫌い」なんて、笑いながら玄関に向かっていく。
そんな彼の行動にまたも呆気にとられ、数秒出遅れて私も玄関に顔を出した時。
ゆっくりと閉まる玄関の隙間から見えた、借金取りが静かに帰っていく姿。
この数秒でなにが起きたのか...。
私はごくりと唾を飲んで、利生君の前に立った。