りせい君の理性が危うい瞬間





「利生くん...なにしたの?」


恐る恐る聞く私を見て、きょとんとした顔を晒す利生君。



「なにって? お金返しただけだけど??」


「なっ...!?お金返したって...っ」



けっこうな額なのに、その場で返せるわけないよ。


それに利生君、リビングに鞄置きっぱなしなのに。財布なんて持ってなかったじゃん。



「...返すから、ぜったい絶対...返すから」



考えたって仕方がない。

理由はどうあれ、お父さんが残していった借金を利生君に払わせるなんて...そんなの、おかしいもんね。




「返さなくたって別にいいのに」


「...それじゃあダメなの、あんな大きな借金、この家の物全部売ったって...返せる額じゃないから。この家にある物全部、私と一緒で価値がないの」



「価値?...バカだね、羽子。 1番近くに、離れても離れられない高価なものがすぐそこにあるじゃん」


「...へ?」


「その価値を見出せないなら、羽子にとってはいらないモノなんでしょ?......なら、俺にちょうだい」




ーードサッ...と、優しくソファに押し倒されて。


揺れ動いた瞳には、利生君の綺麗な顔しか映らない。





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