りせい君の理性が危うい瞬間
簡単に触れられたら、どれだけ楽だろうか。
キスをしようと、唇が彼の手に触れようとするけど。
ドキドキしすぎて、1歩手前で止めてしまう。
意識してることなんてバレたくない...でも、でもね。
変に緊張するんだ。
利生君の前だと、嫌味なほど心臓がドキドキしてしまう。
「羽子。 好きにならなくてもいいよ。 もっと俺のこと嫌いになって、ずっと頭の中が俺で支配されればいい」
「そ、んなの、おかしいよ...嫌じゃないの?嫌いって言われたら普通の人は嫌がるものだよ?」
「おかしくないよ? ずっと羽子の頭の中にいられるなら、どんな感情でも俺は嬉しいし。俺が俺でいられるから」
“俺が俺でいられる“
はじめて利生君に逆らった人間を、従わせたいがための愛なのか。
相変わらず、利生君は意味不明なことを口にする。
下手くそな医者に注射を打たれたら、アザができたみたいに。私は利生君に心を差し出したせいで、心臓から真っ赤ななにかが大量に溢れてきてーー...。
それは私の体を、熱で支配した。
変だ、わたしも利生君も...この世界も。
ぜんぶピンク色に見えて、変だ。