りせい君の理性が危うい瞬間
私は利生君のオモチャだ。
別に恋人でもなんでも、告白されたわけでもないのだから当たり前なんだけど。
男と女、さすがに眠る時はお互い別々の部屋で、利生君は22時になると決まって私の部屋から出て行ってしまう。
ただ隣にいるだけ。 それだけで刺激的な利生君の隣で過ごす三日間は気持ちが悪いくらいに憂鬱だった。
*
朝、目が覚めて。2人だけで食事をした。
一流のシェフが作った、難しい名前の料理を黙々と食べながら利生君を見ると ーーバチッと目が合ってしまう。
「羽子、頬にソースついてるよ」
「えっ、どこ?」
そう言われ適当に頬を触ると、利生君が食事をしていた手を止めた。
テーブルを挟んで私の前に座っていた利生君。
だけど利生君が前から私の隣にやってきて、くすぐるように親指の腹で私の頬についてるソースを拭った。
そしてペロリとそれを舐める彼のせいで、見るからに高級そうな変な模様のフォークとナイフをガシャーンと落としてしまった。
「ごっ...ごめんなさい...っ」
「いいよ、新しいの用意させるから。羽子は座ってな?」
そう言って、利生君がパンパンと2回手を叩くだけで、メイドさんが新しいフォークとナイフを持ってきてくれた。
「ありがとうございます」と、メイドさんに小さな声でお礼を言うと。
なぜか私の言葉を無視して、逃げるように食事部屋から出ていくメイドさん。
すぐに利生君に目を向けると、彼はお肉にフォークを突き立て私のことを今にも食べてしまいそうな目でジッと見ていた。