りせい君の理性が危うい瞬間
「ーー羽子、そこにいるの?」
ズシッと重たく見える扉の向こう側から聞こえてくる利生君の声。
いつもより低い声は、閉じ込められている私を心配しているというよりは、怒っているような気がする。
「りっ...利生君!助けて!!」
さっきまであんなに無気力だったのに。
助けが来たと思うと、急に出てくる大きな声はとても不自然だ。
ガチャっと軽く開いた扉から差し込む光に、目が輝いた。
だけど。
ーーバンッ!と勢いよく閉まる扉。
一瞬で真っ暗になるこの空間は、闇そのものだ。
「お昼は俺と過ごすって、約束したよね?
もう休み時間過ぎちゃったんだけど、羽子は約束も守れないの?」
「...へっ?」
呆れた表情で大きなため息を吐く利生君。
呆れたいのはこっちの方だった。
だって普通、見て分かるでしょ? 私が閉じ込められたって。
なのに...なんで。
心配すらしてくれないの?