りせい君の理性が危うい瞬間
ーーグイッと利生君の胸ぐらを掴んで、引っ張る。
一瞬、目を見開く利生君との距離はゼロになり。
「んっ……」
甘い吐息が漏れる。
私は自らの意思で、利生君にキスをした。
利生君が私を従わせたんじゃない。
私が利生君を従わせたんだ。
立場なんか……どうだっていい。
黙って利生君の思いどおりになるほど、私はイイ子にはなれないんだ。
「ッ……食い殺すかの様なキスだね、羽子。
そんなに俺のこと憎い?」
唇が離れて分かる。
ずっと目を開けて、ずっと私の表情を伺っていた利生君の口角が、嫌みなほど上がってるってことが。
思いどおりにならないことにイラだって笑っているのか。
それとも思いどおりにならないことに、逆に興奮しているのか。
利生君はこれまで以上に、真っ黒な笑みを浮かべている。