りせい君の理性が危うい瞬間
そう思っていた、その時。
ーーえっ?
その顔は私の横顔を通りすぎ、そしてそのまま私の肩に埋める。
っと、次の瞬間。
「いっ……!?」
チクッと首筋に、痛みが走る。
一瞬の痛みだった。
だけどボヤけた視界から感じ取れるその痛みは、とても熱い。
ずっと体の中に残ってしまう様な痛みなんじゃないかと疑ってしまうほどに。
だけどそんなのはまやかしで、すぐに痛みはなくなった。
「なぁ……わこ?」
顎は私の肩に乗せたまま、上目遣いで妖しく笑う利生君。
「キスされると思ったでしょ……?」
「ーーッ!?思ってない……!」
「嘘。顔に書いてあるよ。
したかったらしてもいいよ。
こんどはこれぐらいじゃ、済まないだろうけど」
「……最低」
「羽子の『最低』は聞き飽きたよ。
でもさ……」
利生君は私から離れ
踏みつけたままのグシャグシャのリボンを屈んで拾い、私の胸元に押し付ける。
「約束通り。羽子からキスしてくれたから、今度からは羽子に何かあった時助けてあげる。」
「……」
「先に外で待ってるから。
落ち着いたらおいで。」