りせい君の理性が危うい瞬間





感情に嘘がない利生君がニコッと笑う度、ゾクッと鳥肌が立つ。



自分からキスしたあの日から、安藤さんからのいじめがピタリと止まった。


多分安藤さんも、利生君にひどい事言われたあの日から、いじめをする気力すらなくなったんだと思う。



……じゃあ、私からキスしたのって、これじゃあまるで意味がないし、なんだか損した気分。


ボーッと日誌を眺めながら、いつの間にか持っていたシャーペンの、芯を押し出す部分を唇に当てていた。


それを流し目で見ていた利生君が、体勢を変えて、私の頬を掴む。


利生君に頬を掴まれたせいで、私の唇は突き出し、タコみたいな顔になっちゃってると思う。



「ちょっ……なに!?」


「やらしーね羽子、1人でなに考えてんの?
 もしかしてこの前のキスのこととか?」


「……っ」


「当たり?
 すぐ顔に出るんだから、そういうとこも可愛いけど。
 あんまり隙ばっか見せてると、喰われちゃうよ?」


「……」


「まあ羽子を喰うのは俺以外、ありえないんだけどネー」




< 78 / 93 >

この作品をシェア

pagetop