りせい君の理性が危うい瞬間
感情に嘘がない利生君がニコッと笑う度、ゾクッと鳥肌が立つ。
自分からキスしたあの日から、安藤さんからのいじめがピタリと止まった。
多分安藤さんも、利生君にひどい事言われたあの日から、いじめをする気力すらなくなったんだと思う。
……じゃあ、私からキスしたのって、これじゃあまるで意味がないし、なんだか損した気分。
ボーッと日誌を眺めながら、いつの間にか持っていたシャーペンの、芯を押し出す部分を唇に当てていた。
それを流し目で見ていた利生君が、体勢を変えて、私の頬を掴む。
利生君に頬を掴まれたせいで、私の唇は突き出し、タコみたいな顔になっちゃってると思う。
「ちょっ……なに!?」
「やらしーね羽子、1人でなに考えてんの?
もしかしてこの前のキスのこととか?」
「……っ」
「当たり?
すぐ顔に出るんだから、そういうとこも可愛いけど。
あんまり隙ばっか見せてると、喰われちゃうよ?」
「……」
「まあ羽子を喰うのは俺以外、ありえないんだけどネー」