【短】届かない声は距離のせい
二人の距離
***
「晴香、帰らないの?」
「あ。ちょっと図書館に用事」
「そっか。また明日ね!」
「うん、バイバイ」
不安な気持ちが増したまま放課後。
就職コースの話はすでに終わったはずなのに光哉だけ戻らず、わたしは取りあえず待つことにした。
初日から就職や進学の話ばかりで嫌になる。それが就職コースとなれば、色々と精神を削りそう。
光哉は大丈夫なんだろうか。
――――先の話なんて、したことなかったな。話? 最後に話した話題ってなんだった?
登下校の、あの距離のせいでクラスメイトどころか、友達も光哉と付き合っていることを知らない。
何となく言えないままで罪悪感がある。