【短】届かない声は距離のせい
誰も知らない。
知っているのは自分たち二人だけ。
ある日突然、その事実さえなくなってしまいそうで、何のために後ろを歩いているのかがわからない。
――――わたしたち、本当に付き合ってるのかな……。
その時、光哉が教室に現れる。静かに荷物をカバンに詰め込んで、ゆっくり振り返った。
準備が出来た合図だ。わたしもカバンを持って立ち上がる。
廊下に出た光哉を追う。
――――またこの距離。
二メートルほどの距離が憎かった。
恋人となって近づいたはずの距離。しかし、それは勘違いだったのかもしれない。
届きそうで届かない未来のようでもどかしい。