【短】届かない声は距離のせい

 夕日に照らされ、彼の後ろ姿が輝いて見えた。



「あ」



 晴香は先を行く彼の手を見た。



 ――――わたしの影が……。



 そっと触れてみる影の手。光哉と手を繋ぐように、のびた影が少し震えているようだ。


 このまま離れていくのをただ待っているしかないの?
 開いていく距離はもう縮まることはないの?
 未来にあるのは別れだけ?


 いろんな想いが募っていく。
 背中ばかりを見ていると、その優しい笑顔も忘れてしまいそう。
 大好きなのに、忘れてしまうの?

< 14 / 27 >

この作品をシェア

pagetop