【短】届かない声は距離のせい


「光哉は……っ」

「好きに、決まっている」

「でも、わたし光哉のこと知らない。どんなご飯が好きとか、普段どう過ごしてるのとか、就職どうするのかとか……そんなことも知らなくて」



 言いたいことが次々に溢れるように出る。
 抑えていたものが飛び出して、自分でも何を伝えたいのかわからなくなってしまった。


 深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。
 光哉を見上げると、すぐに唇に優しい温もりが触れた。


 本当に触れただけのキス。
 驚いて次の言葉が言えなくなった。
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