【短】届かない声は距離のせい

 雪は好きではない。
 特に晴れた日、道に積んである雪を見ると異常なほど眩しい。キラキラと輝いて、美しさを見せつけられているみたいだから。


 彼も同じように輝いている。
 暗いところなどなくて、頼りになって、優しくて、どうしても自分と比較してしまうことに、ますます憂鬱になる。



「ふう」



 ため息とともにベージュ色のコートが風にふかれて、寒さに震えた。


 いつの間にか足元ばかり見ていたことに気づいて、慌てて顔を上げた。


 すると、そこに彼はいた。


 日に焼けた顔を太陽に向け、恐れることなく両足でしっかりと立つ彼の姿。羨ましいほどに恰好よくて憧れる。だからこそ、嫉妬してしまう。


 とても太陽が似合う人。そんな太陽が羨ましくて、嫌いだった。

< 2 / 27 >

この作品をシェア

pagetop