【短】届かない声は距離のせい
「複雑……」
「え?」
「俺の家が複雑って、聞いただろ?」
「それは――――」
「隠さなくていい。晴香の友達が見てたの、気づいてたから」
「……うん」
見られていたことも、友達と話していたことも光哉は気づいていたに違いない。
わたしはそう思って申し訳なくなった。
「ごめんなさい」
「いいんだ。間違ってないから」
光哉は丁寧に話し始める。
「親父は小学生の時に再婚した。相手には大学生の子供がいて、本当に変な気分だった。いきなり母親だ、兄貴だって紹介されて」
「いいの? そんな話、わたしなんかにして」
「晴香だから話したい。話させてくれないか?」