【短】届かない声は距離のせい
いつになく饒舌だから止めなかった。
話している光哉がすごく楽しそうだったから。
「仲良くなれなくて、親父に苦労させた。家出もしたし」
「すごく意外」
「でも、最近になって家族になれた気がしたんだ。他人の家に感じていたものが、温かい家庭に思えてさ」
光哉はそこまで話すと、急に立ち止まる。どことなく悲しげで首を傾げる。
「進路を決める時に急に申し訳なくなって。それから、また他人の家に戻ったような気がした。母や兄貴とも血の繋がりがない。仲良くしてる両親見たら、よそ者なんだって気がして。それから進路を変えた」
「え?」
「大学に行くのにお金がかかるだろ? 迷惑をかけたくなかったし、あの家を出たいと思って就職することにしたんだ」