【短】届かない声は距離のせい
光哉は何も変わらずいつも通りだった。
悲しくて、苦しかったはずなのに。
そんな光哉に近づきたいと、自分勝手なことばかりを思っていた。
彼が苦しんでいるだなんて考えなかったことが恥ずかしくなる。
「それで? 光哉はどうするの?」
「兄貴は大人だった。俺はまだ子供で、ただ拗ねているだけで。人間が出来ていないって気づけたんだ。それは両親にも、晴香にも教えてもらった」
「え、わたし?」
改めて光哉はわたしの手を握る。