【短】届かない声は距離のせい
「晴香はこうしていつも、俺の話を聞いてくれる。話さなくても傍にいてくれる。それがどんなに心強いか……」
「わたしには聞くことしか出来ない。臆病だもの」
「誰かに支えてもらって、やっと俺は立つことが出来ている。そんなことに気づけなかったんだ。まだまだ人生の修行が足りない」
再び歩き始める。
これまでで一番近い距離。道行く人が振り返るってことは、恋人に見えているって思っていいのかな。
「大学、目指そうと思う。出来れば晴香と一緒のところを」
「わたしと?」
「学部は違うかもしれないけど、同じ大学に行きたい。先生にも就職をやめること、今日話してきた。ちょっと面倒なことになったみたいだけど」