【短】届かない声は距離のせい
今日、なかなか教室に戻ってこなかったのはそういうことだったのかと、改めてほっとする。
内心、何かあったのではないかと不安に思っていたから。
「なんか、嬉しい。光哉と同じ大学行けるかもって考えたら、すごく……」
また涙が溢れてきた。
ほっとして、嬉しいことが出来て、今まで以上に縮んだ距離に、幸せだと思えた。
「友達に晴香を紹介したい。それに俺のことも紹介して欲しい」
「うん」
「それと、晴香がさっき言ってたカフェ」
「閉店しちゃったから、どこか違う……」
光哉は首を振る。あっという間に沈みそうな夕陽が、光哉の向こうに見えた。