【短】届かない声は距離のせい


「あのカフェ、閉店したんじゃないよ」

「どういう……こと?」

「ただの移転。ちゃんと貼り紙見なかった?」

「え、え!?」



 まさか、そんな恥ずかしい勘違いをしていたなんて思わなかった。



「近いから、一緒に行こう」

「……うん」

「兄貴にも晴香を紹介したい。やりたいこと、他にある?」

「ある……いっぱい、いっぱい……っ」



 ゆっくりと歩き出す。


 今までの距離を縮めて、同じスタートラインに立って。
 時にはお互いを見ながら、同じ方向を目指して。

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