【短】届かない声は距離のせい
わたしは告白された日のことを思い出す。とても暑い夏の陽射しの中だった。
高校二年。長い応援期間が終わったその日に呼び出された。
わたしも吹奏楽部として、応援部と共に大会があるたび忙しくしていた。だから呼び出された時は、部の伝達事項か何かかと勘違いしたっけ。
『好きだ』
学校の応援団として活躍する、あの無表情で真面目な光哉が告白なんて信じられなかった。
叶わないと思って、わたしは想いを永遠に告げないと決意したばかりだったから余計に。
こんな展開、予想出来るはずもなく戸惑うばかりだった自分を思い出す。
それを光哉は断られたと勘違いして、謝って去ろうとした。わたしは慌てて手を握って止めた。
今はそこまでの勇気がなくなってしまった。うっかり咲いてしまって、雪の底で震えるタンポポみたい。