【短】届かない声は距離のせい


『登下校、一緒にいてもいい?』



 それは告白のつもりだった。
 好きな人と一緒に学校に行き、手を繋いで帰る。映画やドラマで観てからの憧れ。


 光哉とそうなりたいと、ずっと思っていたのに。


 あの日以来聞いていない、光哉の気持ち。
 同じく告げていないわたしの気持ち。


 憧れの登下校は思っていたものと違って、ただ心細くなるだけ。



 ――――付き合っている意味、あるのかな……。



 ふと思う。


 念願の恋人になれたはずなのに、これでは恋人とは言えない。
 友達とも違う。


 一体、どんな関係なの?


 そうやって自問自答を繰り返し、もやもやしたまま学校まで歩いた。

< 6 / 27 >

この作品をシェア

pagetop