それでもやっぱり、君が好き【8/26番外編追加】
通信教育の3年間、美容室でいろいろ勉強させてもらって、身につけて。
3年生で国家試験を取れば、免許と同時にすたリストデビューさせてもらえる。
それが今のあたしの目標。

とても大変な3年間で遊ぶことも全然できないかもしれないけど、それは夢を叶えるために必要な時間。



──コンコンッ



ドアをノックする音。



「多分もう1人、練習していく子がいたからその子だわ。待っててね」



さーたんがドアに向かって歩いていく。



「さーたん、大丈夫?」


「うん、練習でしょ?」


「あぁ」



……この声。
久しぶりに聞いたのに全然忘れないその声に、あたしの手は止まる。



「……っ」



コツコツという足音が近づいてくる度に、ドキドキと加速するあたしの胸。



「あ、亜実じゃん」



あたしに気づいた彼は、ニッコリと笑う。



「うん、久しぶり」



平静を装うふりをして、マネキンに向き直る。

雄大とは、入院していた時に会って以来話してはいなかった。
美容の授業は一緒だったけど、あたしが一方的に避けちゃってたから。

溢れそうな想いを抱えながら。

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