それでもやっぱり、君が好き【8/26番外編追加】
「亜実、俺らの出番もうすぐだから行くから」



隣の席の春樹が立ち上がる。



「あ、うん。曲、楽しみにしてるね。頑張って」


「おう、なんか今日元気ねーけど、そんなの吹き飛ばしてやるからな」



ぽんっと頭を叩かれる。

春樹には本当にかなわない。
何も言ってないし、極力笑顔でい続けたのに。
それに披露宴が始まってからは、思い出さないようにしていてあたしですら忘れてたくらいだ。

でも、そんなのは春樹にはお見通し。
いつだってかなわないんだ。



「亜実」



春樹がいなくなってすぐ。
隣の椅子がひかれて、あたしの名前を紡がれる。



「え、なんで?」



突然、隣に現れた雄大に目をぱちぱちとさせてしまう。



「仕事終わったからさ。俺も二人知ってるし行きたいなって思ってたら春樹に言われたんだよ。途中から亜実が1人になっちゃうから来いよって」


「……そうなんだ」



普段のあたしなら、素直に受け止めただろう。

でも、仕事って嘘をつかれて、感情がぐちゃぐちゃになってしまう。

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