虹虫
薄暗い病室で、ケンジは立ち尽くしままナツミに話しかけた。



毎日しているように−−。


二人だけの病室に、ケンジの声だけが響く。



「覚えてるか? あの雨の日」



ナツミの頬に手の甲を宛てる。



冷たい・・・・・・。



氷のように、冷たい。



あの日もそうだった。
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