天国への橋
「そうか、もう五歳だもんな?」



親父は、嬉しそうに笑った。

俺も、嬉しくて笑う。









「なるほどね、天国か……」




そう呟いた親父は、俺の顔を覗き込んできた。







「知ってるか?天国には、行ける人と行けない人がいるんだぞ」

「どうして?」

「良い人じゃないと、神様の所には行けないからだ」


良い人じゃないと行けない。


その言葉に、俺はすかさず聞いた。






「僕は?僕は行ける?!」

「もちろん!行けるに決まってるだろ?お前は良い子だから」

「母ちゃんは行ける?」

「ああ、お母さんも行けるぞ」

「じゃあ、父ちゃんも行けるね!」




「…………」





親父は、沈黙した。







「………お父さんは…」




言いかけた親父は、うつむいて、唇を噛み締めていた。





覗き込んだ俺の瞳に映ったのは、見た事の無い親父の表情。




悲しそうな表情。







瞳は潤んで………今にも涙が溢れ出しそうな程に……。






やがて噛み締めた親父の唇からは、懺悔にも似た悲痛な声が洩れた……。




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