天国への橋
「あの子、まだ五歳よ……ひどいわ!父親がいなくなるなんて!」



居間で、母さんが叫んでいる。




「お前達にはすまないと思っている…自分勝手な事も分かっている」



親父の声もする。




ドライブに行った日から、七日目の出来事。









夜中、トイレに行きたくなった俺は、母さんのベッドを覗いた。




だが、母さんはいなかった。




親父もいなかった。







この時間、両親が起きている事は珍しくはなかったが、なぜか俺は不安になった。




胸騒ぎがしたんだ。








俺は、トイレに行くのも忘れ、一階へと降りて行った。



少し開いた居間のドアから、もれた光が廊下の床に線を描いている。








そして俺は…母さんと親父の話し声を聞いた。




尋常では無い声に、恐怖と不安が更に込み上げる。







俺は、開いたドアの隙間から、そっと中の様子を伺った。










母さんは、ソファにもたれて泣いている。


親父は、そんな母さんに深々と頭を下げている。




テーブルの上には、一枚の薄紙………。






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