天国への橋
瞬間、俺は、玄関で靴を履いている親父の背に向かって駆け出していた。



後ろで母さんが叫ぶ。



そのまま、抱きかかえられた俺は、訳もわからず泣き叫んでいた。








なぜ行くのか。

自分は一緒に行けないのか。




ただ不安で不安で、恐くて……。








「父ちゃん!僕も行く!」





行かないで……行っちゃ嫌だ!



いい子にするから!
いい子にするから!




だから行かないで!


父ちゃん!

お願いだから行かないで!




俺を置いて行かないで!







「連れてって!僕も一緒に行く!」



父ちゃん!




「僕も行く!」

「駄目だ!!」





初めて聞いた、親父の怒鳴り声。



そんな親父の肩は、微かに震えていた。







「やだやだ!行くんだ!僕も行くんだ!」



俺は、母さんの腕を振り払おうと必死でもがいだ。




今行かないと、二度と会えない気がしていた。


親父は、戻らないんじゃないか。





込み上げる恐怖が、俺を掻き立てていたんだ。






けれど母さんは、苦しいくらいに俺を抱きしめる。
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