天国への橋
「行けない!行けないのよ!」




俺を抱き、泣き叫ぶ母さん。








立ち上がった親父は、ためらう様に何度も振り向きかけた。



何度も何度も、ドアのノブに手を伸ばしては、止めていた。







俺は、待っていた。


信じていた。






親父が振り向いて、どこにも行かないよと、笑って俺を抱き上げてくれるのを……。










だが……親父は意を決した様に、ノブを回し…ドアを開いた。




「父ちゃん!!」











親父は、とうとう振り向かなかった。




目の前で、玄関のドアは親父を飲み込み、俺と母さんが残された。







わからなかった。


なぜ、親父が出て行ってしまったのか……。








俺は諦めきれず、毎日家の前で親父の姿を探した。



ただいまと、土産を手に帰って来るかもしれない。




そう、信じていたかったんだ。






「父ちゃんは、いつ帰るのかなぁ」







深く理解せずに、母さんにとって残酷な言葉も呟いた。





その時の母さんの顔は、忘れられない……。







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