天国への橋
2
「父ちゃん!原っぱだ!大きい原っぱだよ!」
五歳の俺は、走る車の窓から顔を出してはしゃいでいた。
「危ないでしょう?ちゃんと座っていなさい」
助手席から顔だけをこちらに向けて、母さんが俺をなだめる。
運転席では、若い親父がハンドルを握りながら笑っている。
俺は運転席のシートにしがみついて、原っぱに行きたいと親父にせがんだ。
先刻まで降っていた雨は、すっかり止んでいた。
遠くの山々の緑が、くっきりと浮かび上がっている。
その中に浮かんでいる様な桜のピンク色は、まるで薄化粧を山に施したみたいだ。
生き生きと空に向かい生い茂る原っぱの草は、雨の雫を含み、再び顔を出した太陽の光を浴びて、水晶の様な輝きを放っている。
路肩に停められた車の窓からそれを見た俺は、思わず裸足で飛び出していた。
まるで、絵本の中に飛び込んだ感覚。
踏み締めた足裏に伝わる、湿った土の感触が心地良い。
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五歳の俺は、走る車の窓から顔を出してはしゃいでいた。
「危ないでしょう?ちゃんと座っていなさい」
助手席から顔だけをこちらに向けて、母さんが俺をなだめる。
運転席では、若い親父がハンドルを握りながら笑っている。
俺は運転席のシートにしがみついて、原っぱに行きたいと親父にせがんだ。
先刻まで降っていた雨は、すっかり止んでいた。
遠くの山々の緑が、くっきりと浮かび上がっている。
その中に浮かんでいる様な桜のピンク色は、まるで薄化粧を山に施したみたいだ。
生き生きと空に向かい生い茂る原っぱの草は、雨の雫を含み、再び顔を出した太陽の光を浴びて、水晶の様な輝きを放っている。
路肩に停められた車の窓からそれを見た俺は、思わず裸足で飛び出していた。
まるで、絵本の中に飛び込んだ感覚。
踏み締めた足裏に伝わる、湿った土の感触が心地良い。
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