天国への橋
「父ちゃん!原っぱだ!大きい原っぱだよ!」




五歳の俺は、走る車の窓から顔を出してはしゃいでいた。





「危ないでしょう?ちゃんと座っていなさい」



助手席から顔だけをこちらに向けて、母さんが俺をなだめる。


運転席では、若い親父がハンドルを握りながら笑っている。




俺は運転席のシートにしがみついて、原っぱに行きたいと親父にせがんだ。









先刻まで降っていた雨は、すっかり止んでいた。



遠くの山々の緑が、くっきりと浮かび上がっている。

その中に浮かんでいる様な桜のピンク色は、まるで薄化粧を山に施したみたいだ。






生き生きと空に向かい生い茂る原っぱの草は、雨の雫を含み、再び顔を出した太陽の光を浴びて、水晶の様な輝きを放っている。










路肩に停められた車の窓からそれを見た俺は、思わず裸足で飛び出していた。







まるで、絵本の中に飛び込んだ感覚。



踏み締めた足裏に伝わる、湿った土の感触が心地良い。









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