たまゆらなる僕らの想いを
茶髪にスカジャン、鼻と唇にピアスを付けた少し悪そうなイメージの男性が、私を鬱陶しげに見下ろしている。
相手の風貌に萎縮してしまい、口を開くも謝罪の声が出ない私を、男性は軽く睨んで舌打ちした。
「ご、ごめ、んなさい」
ようやく絞り出したか細く頼りない声は、相手に届いてなかったのだろう。
「うぜえ」と文句を零し、機嫌悪そうに去っていった。
ぶつかった瞬間に謝るべきだったのに。
相手の顔色を伺ってから行動しようとするのは私の悪い癖だ。
そして、こんな風に人との接し方で失敗すると、思ってしまう。
やはり、人の多い都会は苦手だな、と。
満員電車も、スクランブル交差点も、人の多さに息がつまりそうになる。
吸い込んだ息が重い気がして、軽くする為にゆっくりと吐き出すと、ジャケットの下に隠れている勾玉のネックレスをそっと押さえた。
そして、止まっていた足を再び動かし、私はバイト先へと急ぐのだった。