たまゆらなる僕らの想いを


「ナギが帰りたくないからと下校時刻になってもかくれんぼを続けたままいなくなって。もう先に帰ろうって言った俺に、お前は言ったんだ。きっと、帰りたくない理由があるんだよって」


ああ、それなら覚えてる。

あの時は確か、ナギのことを養子にしたいという人がいるとかで抵抗していたのだと後にナギから聞いたのだ。

結局、ナギのお父さんとお母さんが天国で悲しむかもしれないからとお婆さんが断ってくれたことを、ナギが嬉しそうに話してくれたのを思い出す。


「ナギのワガママに深刻な理由があるなんて、あの時俺は考えもしなかったからな」

「ナギは変なとこで素直じゃないかもね」

「人には素直になれよとかうるさいくせにな」

「私は言われたことないけど」

「俺は耳タコだ」


うざったそうに肩をすくめたヒロを見て、私はクスクスと笑った。

するとヒロも笑みを浮かべて、また味噌カツを口に運ぶ。

そして咀嚼し、飲み込んだところで。


「だから、アイツはお前を追おうとしたんだろうな」


ポツリと、気になることを声にした。


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