たまゆらなる僕らの想いを


ヒロはまだ腑に落ちない顔で「とりあえず上がれ」と促す。

私はヒロのご両親のであろうサンダルの横に自分の靴を並べて、お邪魔しますと挨拶をし家に上がらせてもらう。

ヒロは私を十畳ほどの広さのダイニングキッチンに案内すると、横目でこちらを振り返った。


「いつのまに姉貴と仲良くなったんだ」

「お買い物に来たら、流れでいつのまにか」


説明しながらお酒の入った袋を持ち上げると、ヒロは「お前が飲むのか?」とわかっているのに聞いてくる。


「まだ飲めません」

「そうだろうな」

「ヒロだってそうでしょ」

「一応? まあ、無駄にうまいからな、姉貴は」


あ、誤魔化した。

一応、だなんて、飲んだことはありますと告げているようなものだ。

でも深く突っ込むのもよくないかなと、私はヒロの話にそのまま乗る。


「うまいって、コミュニケーション?」

「というより、自分のペースに巻き込むのが、だな」


そう言われて振り返ってみればそんな気がしてくる。

引っ越しのお手伝いについては私から進言したことだけど、お昼ご飯に関してはうまく誘導された感は否めない。


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