たまゆらなる僕らの想いを
母が綺麗なものが大好きで、父と一緒にそれにしようと決めて作った。
余分に作って母にプレゼントしたら、母はありがとうと言って、自分のドレッサーに飾ってくれていた。
使ったと聞いたことはないけれど、あれはどこにいったのか。
あの日の火事で燃えてしまったのかもしれない。
……『ありがとう』。
そうだ。
あの頃は、ありがとうと言って笑顔を見せてくれていた。
今その笑顔を見れているのはきっと、母の彼氏だけなのだろう。
いや、もしかしたら私以外の人には見せているのかも、なんて暗いことを考えて気落ちしてしまうと。
「……どうした?」
いつのまにか考え耽ってしまっていた私の顔を、温め終わった唐揚げが乗ったお皿をテーブルに置いてヒロが探るように見つめる。
「あ……ごめん」
「暗い顔だな」
そう言って、今度は冷蔵庫からサラダを取り出した。
「ご、ごめんね。せっかくこれから美味しい食事なのに」
もう、本当に自分でも嫌になる。
前向きでいたいと思うのに、思い出してはウジウジとして。
もっと楽しい雰囲気にしなければと笑みを作ったのだけど、ヒロは鍋で温めていた野菜スープを木製のスープボールに入れて、そっとテーブルに置く言った。
「かまわない。話せるなら吐き出せばいい。飯の味なんて気にするな」