たまゆらなる僕らの想いを
【失くした居場所】
「明けましておめでとうございます」
一月一日、元旦。
朝食時、新年の挨拶をした私を見て女将さんは心配そうに眉を下げた。
「明けましておめでとう。凛ちゃん、体調は悪くない?」
「はい。寝不足気味だけど、大丈夫です」
年明けから鬱々とした姿を見せてはいけないと、私は笑みを作ってみせる。
でも、女将さんは笑みを返してくれない。
座卓にお雑煮と少量ずつ盛られたおせちを並べて、急須にポットのお湯を入れると「食べたら少し寝たらどう?」と気遣ってくれた。
「そう、ですね」
お腹いっぱい食べれるかは微妙だけど、少しでもお腹に入れば眠気が襲ってくるかもしれない。
寝不足だとぼんやりしてしまい、考えることさえままならないから、そうするのが良さそうだ。
「それと八雲がね、初詣に凛ちゃんと行きたいって言うんだけど、どう?」
「初詣……ですか?」
「そう。午後から行くつもりなんだけど、凛ちゃんが良ければ一緒に行かない?」
午後からなら、もし少し眠ったとしても行けそうかも。
何より、八雲君が誘ってくれたのが嬉しい。
だけど、ナギが大変な時にいいのかな、と思ってしまう。